令和八年 一月


1.  傘 寿

  

夜景

われ八十寿何時歳とりたか覚えざり

 

 

 

目出度さの中に老いあり傘寿かな

 

 

 傘寿になりました。八十の壁を超えると心身の老化が大きいと聞きましたが、実際その通りで体力・知力の衰えは顕著です。極力、嫌なことはしないと決めました。


2.  枯 蓮

  

夜景

麗しき花の末路や枯の蓮

 

 

 

枯蓮やマチスの絵に似て折れ曲がる

 

 

 近くの公園の蓮池に天上界に咲くといわれる美しい蓮が咲くので、見るのを楽しみにしています。でも、冬の池では蓮の幹は折れて曲がり、枯れ果てて無残な姿です。


3.  招き猫

  

夜景

招き猫客に背を向け初の売り

 

 

 

竹ぼうき雪の帽子を被り立つ

 

 

 正月の初売り商店に招き猫が飾られていました。でも、その招き猫はお客に背を向けて手を挙げ招いています。あまり良いものは売っていませんよとの合図かも・・。


4.  雪の汽車

  

夜景

大海原船ゆく如し雪の汽車

 

 

 

蒸気吐き烈火意見のやかん哉

 

 

 大雪が降った夜、灯りを点した電車が雪原を走って行きます。それは船が大海原をゆく姿にも似ています。灯を点す電車が雪の中をゆく、これは情景満点の光景です。


5.  猫に問う

  

夜景

山姥はお前縁者か猫に問う

 

 

 

家猫は炬燵で寝そべり大あくび

 

 

 山姥が出るテレビドラマを見てました。確しか山姥は猫の出身と聞いたように思い、近くにいた家猫に聞きました。私はそんなこと知りませんね、との返事でした。


二 月


1.  葉の芽

  

雪の朝

春よ来い雪に葉の芽が歌唄い

 

 

 

赤芽立つ春の近きを知りており

 

 

 まだ寒い日が続きますが、垣根の木々に葉の芽が付きました。木々たちはもう春が近いことを知っているのでしょうね。私は、寒いので今晩は熱燗と思っているのですが・・・。


2.  沈丁花

  

ガラス玉

沈丁花闇夜の中のかくれんぼ

 

 

 

われ傘寿蝋梅の歳に届かざり

 

 

 夜の帰宅の途中に、沈丁花の甘い香りがしました。あたりを見回しましたが暗くてどこで咲いているか分かりません。闇夜の中で、沈丁花とかくれんぼをしているみたいでした。


3.  無事是貴人

  

酒器と猪口

八十寿なら無事是貴人日向燗

 

 

 

ともかくも今日も終りて手酌酒

 

 

 同年配の知人は、一日を無事過ごすことを心掛けるといいます。同感です。そこで今晩の晩酌は熱燗でなく日向燗(ぬる燗)にします。火傷でもすると無事是貴人ではなくなりますから。


4.  冬籠り

  

達磨さん

冬籠り夜窓に映る老いた顔

 

 

 

チョコレート最中とどちら先食べる

 

 

 食卓の上にあるチョコと最中のどちらを先に食べるか。西洋文化を味わった後に東洋文化を味わう、またはその逆?この社会文化選択の決定はかなり難しい問題です。


5.  黄泉の国

  

お地蔵さん

黄泉の国そんなに良いか又ひとり

 

 

 

歳時記を冬から春に替え置きぬ

 

 

 元同僚が亡くなりました。私よりもずっと若くて優秀で、まだまだ活躍されると思っていました。黄泉の国に渡るのが少し早過ぎると思うのですが、これも人の定めでしょうか。


三 月


1.  春は来た

  

デパートのショーウインド

飾り窓デパートに先ず春は来た

 

 

 

世話なりし手袋ぽい捨て春になる

 

 

 デパートのショウウインドーが春の飾り付けになりました。春とは名ばかりで、少し早過ぎるように思うのですが、春の準備をしなさいとのメッセージでしょう。


2.  寒 椿

  

寒椿の花

闇路ゆく垣根に沿ふて寒椿

 

 

 

浅き春牡丹の赤芽空を向く

 

 

 寒くはありますが、日脚が少しづつ伸び春が近いのを実感できます。わが家の鉢植えの牡丹の枝には5つの新芽が付きました。その新芽はみな空を向いています。


3.  雪の舞

  

雪降り

街灯のひかりとダンス雪の舞

 

 

 

美しきひと夜目遠目マスク哉

 

 

 昔に比べると雪の降るのが少なくなりました。先日、東京にも久しぶりに雪が降り道路や庭が白くなりました。夜の街灯のひかりの中、雪はダンスを踊っていました。


4.  初黄蝶

  

小さな草の花

初黄蝶春よ春よと飛跳ねる

 

 

 

君の名は問えど応えぬ草の花

 

 

 今年初めての黄蝶が、わが家の小さな庭に飛んできました。これを見て、私はわが家が春になったのを宣言しました。黄蝶は忙しそうに垣根を飛び越えていきました。


5.  日向ぼこ

  

お年寄り人形

日向ぼこ私も祖母の歳になり

 

 

 

どうしたの猫目問いたる日永かな

 

 

 私と家猫は、ガラス戸越しの日溜りにいました。図書館から借りた本の返却日は何時だったかなと考えていたら、家猫は「どうしたの?」と私をちらり覗き見ました。