令和 七 年 一 月
1. 寺の街
をちこちに除夜の鐘聴く寺の街
山中に暦日無けれど初飾り
信州飯山は、豪雪と寺の街として知られ、私の第二の故郷です。大晦日になると、あちらこちらから除夜の鐘が聞こえ、新年がよい年になるよう鳴り響きます。
2. 初 春
初春や千両前に屠蘇の酒
門松や一夜飾りの澄まし顔
門松の飾り付けが、年末に用事が重なり一夜飾りになってしまいました。元旦になって門松を見ましたが、澄ました顔をして正月飾りの役目を果たしていました。
3. 水 引
水引の赤と白との線跳ねる
あな嬉し福と寿の名の草見つけ
禅宗のお寺では、一年を通して修行を行う意味で「山中暦日無し」の禅語があります。しかし、お寺の方丈には新春を寿ぐ正月飾りが華やかに飾られています。
4. お神酒
酒樽の栓抜き刹那神現る
きみとなら百歳まで共に般若湯
酒樽の栓を緩め、ある刹那で菰樽から神水が受け升に注ぎ出てきます。その瞬間、神さまがこの世に現れ出てきたのかと思うほど、厳粛で嬉しい気持ちになります。
5. 独行意生
百足らず八十歳目指し独行意生
南天の小さな朱実はわが太陽
「百足らず」は、百以下の数字にかかる枕詞です。百より小さいのに物ごとを大袈裟に言いなさんなと言われたようで、私はもう少し頑張ってみようと思いました。
6. 冬牡丹
冬牡丹そろそろこちらへ妻の声
娑婆の世は今宵湯豆腐炬燵酒
上野東照宮の冬牡丹を見に行った時、天国の妻からそろそろこちらへと誘われたような気がしました。でも、今夜は湯豆腐と熱燗が待っているのでとお断りしました。
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投稿者 中嶋 徳三